日々是好日

もうすぐ夏休みが終わるという頃。
娘が文庫本を持ったまま大きなため息をついていた。
本は夏目漱石の「こころ」。
おお、珍しい。たとえ表紙につられたのだとしても、たまには文学に触れるのもいいことだ。（カバーイラストがデスノの小畑さん）
しかし娘は浮かない顔。一体どうしたのかと訊いてみたら。
夏休みの宿題で、感想文を書かねばならない、と。
感想文？受験生が夏休みの宿題？ちんたら感想文を書け、と？…変な学校。
どうも現国の先生の主義らしい。
で、推薦図書として、太宰治だの森鴎外だの川端康成だの夏目漱石だの。
しかし、どうにも読む気になれない、と。「つまらない」と娘はまた溜息。
まあ、そりゃそうだ。
今までろくすっぽ読んだことがないのに、突然太宰やらは辛かろう。
純文学と一言で言っても、まさしく「時代が違う」。感覚も違う。夏目漱石を読むくらいなら、村上春樹の方がよっぽどためになる。と、思う。

若い頃はそれなりに読み、考えもしたけどさ。太宰とかさ。
結局は自己陶酔の世界にしか見えんのよ。今読むと。なんか小難しいことばっか言って、ちっこい事で悩んでる自分を密かにイケてるとか思ってるナルシスト。
すいません、お好きな方。要は、今とは感覚も価値観も違うといいたいだけです。
例えば、娘くらいの年齢の子だったら、「伊豆の踊り子」の一高生のアホさかげんより、「十七歳だった！」（原田宗典）の原田少年の方がどんだけ共感できるか。愛すべきアホ、元気が出るおバカだよ。
何気にそう言ってたら、数日後、娘はその「十七歳だった！」の感想文を書いていた。
いいのか、と一瞬焦ったが、そのまま提出。
先生になんか言われたら、母親として私が反論したる！と約束したものの、結局は大丈夫だったらしい。
むしろ褒められて、優秀賞を取った、と。（小学校か）

結局、何が心に響くかなんて、決められないんだよね。
小難しい単館系のアートシアターよりも、映画「クレヨンしんちゃん」に感動することもある。
ツルゲーネフは寝ちゃうけど、スティーブン・キングは最高。
「風と共に去りぬ」は知らないが、「メン・イン・ブラック」はちょー好き。
ルネッサンス期の絵画より、小畑健さんの絵にうっとりする。
みたいな。

ところで、突然ですが、「私は貝になりたい」って、いつ公開でしたっけ？